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Interview

好きを仕事に変える – クライアントワークとオリジナル作品への挑戦を続けるイラストレーター 古弥月さん

Interview

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クライアントワークで多彩なイラストを手掛けながら、個性あふれるオリジナル作品にも挑戦を続けるイラストレーター古弥月さん。

古弥月さんのポートフォリオhttps://xfolio.jp/portfolio/komizuki

この記事では、キャリアの軌跡や活動の秘訣、未来への展望を深掘りし、プロの視点で語る創作の楽しさとリアルを紹介します。これからイラストレーターを目指す方にとって、前に進むためのヒントになれば幸いです。

描き続ける情熱:イラストレーター古弥月さんの活動内容

____活動内容について教えてください

私はフリーランスのイラストレーターとして、1枚絵のイラストやライトノベル、書籍の挿絵、その他イラストに関する業務全般を行っています。特に、ゲームやライトノベル(ラノベ)、VTuberのイラスト制作のご依頼をいただくことが多いですね。

「白いドレスと紅い月がとけあう夜に」水鏡月聖 [角川スニーカー文庫] – KADOKAWA

____主にクライアントさんの要望に合わせてお仕事をする形ですか?

そうですね、私はイラストを制作する立場ですので、クライアントさんが「この企画にはこんなイラストが欲しい」と思ったときに、私を見つけていただき、「この人にお願いしたい」と選んでくださる形です。そこから具体的な要望を伺い、決まっている内容に合わせて提出するという流れで進めています。

____クライアントさんからの仕事のルールは厳格ですか?

イラストのお仕事には基本的なレギュレーションがあります。例えば、データのサイズや形式、印刷物用なら色味のデータがRGBではなくCMYKである必要があるなどですね。ただ、私の場合は基本的に「古弥月」と名前が出るお仕事が多いので、絵柄を特定のIP(知的財産)に合わせる必要がある厳格な規定は少ないです。

一方で、イラストレーターの中には、既存のIPに合わせた絵柄で制作する仕事をする方もいます。その場合、名前が公開されないこともありますが、私は自分の絵柄で描ける仕事を中心に選んでいます。そのため、自由度の高い案件をいただくことが多いですね。

オリジナルとクライアントワークの絶妙なバランス

____ご自身でのコンテンツ販売はされていますか?

私は同人誌やFANBOXでコンテンツ販売をしていますが、その割合は全体の1割以下です。

最近では、自分のコンテンツで収益を得るイラストレーターも増えていて、YouTubeや支援サイトを活用している方も多いですね。私の場合は、自分のコンテンツで収益を得るタイプではなく、クライアントワークの方が大きな柱になっています。

同人誌も数年に1回出せるかどうかというペースで活動しているので、自分のイラストを直接販売する活動よりも、クライアントワークに重きを置いているのが現状です。仕事の合間に趣味のイラストをネットに公開するぐらいに留まってます。

____クライアントさんの仕事が多いようですが、同人誌も出していきたいですか?

そうですね。同人誌も出したい気持ちはありますが、現状はクライアントさんのお仕事がメインです。これからのキャリアプランとして、クライアントワークを少し減らして、自分のオリジナル作品を作る時間を増やす選択肢もあります。ただ、それは今後の自分の方針次第ですね。今のところ、受託のお仕事に比重が偏っているのが現状です。

____SNSでうまく発信している印象ですが、コンテンツを売り出すのがメインではないのですか?

そのように見えるかもしれませんが、実際にはオリジナル作品の発表数や密度が足りていないと感じています。お仕事をこなしながら、オリジナル作品をもっと並行して発信している方もいらっしゃいますし、コミケに継続的に出展している方々と比べると、まだまだだなと思う部分が多いです。同業者と比べて、自分のオリジナル作品の発信密度が少ないのが率直な印象ですね。

音乃瀬奏「奏 / スキマスイッチ(cover)」MVイラスト – 古弥月 ARTWORKS

これからは、どのくらいの割合でクライアントワークとオリジナル作品の活動を進めていくか、しっかり考えながら模索していきたいと思っています。今はまだ具体的な方向性を断言する段階ではなく、日々考えながら過ごしているところです。

____コミケについて教えてください

コミケ(コミックマーケット)は、出版社を介さずに、自分で印刷所に依頼して作った本を頒布する同人誌即売会のイベントです。

特にコミケは、国際展示場の全ホールを使って開催される非常に大きなイベントで、多くのイラストレーターがオリジナル作品を出展しています。中には行列ができるほど人気のあるプロのイラストレーターもいて、ファンの方々にも楽しんでもらえる大規模な場になっています。イラストに関係する方であれば、参加者としても出展者としても、一度は関わったことがあるようなメジャーなイベントですね。

私自身も過去に描いたイラストをまとめて出展したことがあります。ただ、フリーランスになってまだ4年目なので、出展の回数は少ないです。その代わり、来場者として参加することは頻繁にあります。興味のあるイラストレーターの本を買ったり、同業者の方々と挨拶したり、勉強のために訪れることが多いですね。

プロフェッショナルの原点:イラストレーターとしての歩み

#オリジナル 待ち合わせ – 古弥月のイラスト – pixiv

____いつからイラストレーターのお仕事を始められたのですか?

厳密にイラストのお仕事を始めたのは、約6年前です。新卒でスマホゲームのイラストを制作している会社に入社して、会社員として2年間イラストを描く仕事をしていました。その後、退職してフリーランスのイラストレーターとして活動を始めました。

____そこで初めてイラストレーターとしてのキャリアが始まったのですか?

そうですね。学生時代にはイラストレーターとしての経験はなく、新卒で入った会社がイラストレーターとしてのキャリアのスタート地点です。会社員時代は毎日イラストを描く仕事をしていて、肩書きとしては会社員でしたが、職業としてはイラストレーターだったと思っています。

____イラストレーターの仕事に興味を持ったきっかけは何ですか?

もともと小さい頃から絵を描くのが好きで、学生時代からずっとイラストを描く仕事をしたいと思っていました。その思いがあったので、自然とゲームのイラストを制作している会社に就職する進路を決めて就活をしてました。学生時代は主にパソコンで絵を描いていて、当時ハマっていたゲームやキャラクターを描くのが楽しかったです。

____学生時代の絵はどのように楽しんでいましたか?

主にSNSなどインターネット上で公開していました。趣味の範囲ではありましたが、より良い絵を描くために練習するのと、見てもらえることなどが楽しくて続けていました。

趣味と仕事、それぞれの楽しさと挑戦

____お仕事として描くイラストと、自分のオリジナル作品にはどのような違いがありますか?

お仕事として描くイラストは、クライアントさんの企画があって、その企画をより魅力的に見せるために描くものです。クライアントさんのコンテンツをどう良く見せるかを考えながら進めていくのがポイントですね。

一方で、オリジナルのイラストはゼロから「これが良い」と思えるものを自分で考えるところが大きな違いです。お仕事ではクライアントさんの企画が基盤ですが、趣味では自分のアイディアが基盤になります。

____その違いをどのように楽しんでいますか?

イラストを描くこと自体が好きなので、仕事でも趣味でもそれぞれ描く作業自体を楽しんでいます。それに加えて、お仕事ではクライアントさんの期待に応える楽しさがあり、趣味では自分の好きなものを、どう見た人にも良いと伝わるように描けるかと模索する楽しさがあります。どちらにしても「相手がどう感じるか」を考えながら進めているので、それがさらに面白さに繋がっています。

____イラスト以外にクリエイティブな活動はされていますか?

絵を描くこと以外のクリエイティブな活動は特にしていません。制作に関しては完全にイラスト一本ですね。ただ、インプットとして写真を撮ることはあります。あくまでイラスト制作のための参考資料として撮影しているので、他の何かを「作る」というわけではないです。

____案件を獲得する前に、イラストレーターとしての勉強や修行をしていた時期はありますか?

イラストレーターとしての技術を本格的に学んだのは、ゲームのイラストを制作する会社に勤めていたときです。会社では、先輩方や上司から直接フィードバックを受けながら学びました。その経験が、今の自分の絵に大きく影響を与えています。

美術大学で美術系の授業を受けてはいましたが、実践的な技術やクオリティの基準を学んだのは、やはり会社での経験が大きかったですね。特に、実際のゲームで使用されるレベルのイラストを求められる現場で指導を受けたことで、高い基準を目指して制作する力が身につきました。

先輩方は「これならゲームで使える」というクオリティに到達するまで、しっかりと指導してくださいました。そのおかげで、実践的な技術や経験を積むことができました。この期間は、私にとって非常に重要な学びの場でした。

____イラストレーターとしての活動を中断せずに続けてこられたのですか?

イラストレーター以外の仕事をしたことはありません。ただ、活動を振り返ると中断に近い時期はありました。会社を辞めるタイミングで持病を患ってしまい、体調が悪い状態が続いていた時期があります。退社直後にフリーランスとしての開業届を出したのですぐにお仕事を始めましたが、病気のために十分な活動ができなかった期間がありました。

その時期は、絵のクオリティを高めるのが難しかったり、そもそもたくさんの作品を描くことができなかったりしました。現在はかなり回復して、自分のペースで活動を続けられるようになっています。

クライアントさんには持病について自分から相談することはありませんが、代わりにスケジュール管理を徹底して、提出物は早めに仕上げるよう心がけています。こうした努力のおかげで、スケジュールを守る姿勢や提出の速さについて、クライアントさんから良い評価をいただいています。

今も完全に完治したわけではありませんが、体調と相談しながら、しっかりと活動を続けています。仕事に関しては、提出期限を守り、できるだけ迅速に対応することを心がけています。

「好き」を仕事にする秘訣とは?

Vsinger赤星光希 – 古弥月 ARTWORKS

____活動を継続できている秘訣は何ですか?

一つ目は、やっぱり絵を描くことが好きだということです。お仕事でも趣味でも、なるべくたくさん描くようにしています。お仕事として描くのも楽しいですし、趣味として描くのもまた楽しみの一つです。お仕事がない日でも、「何かしたいな」と思ったらまず絵を描いています。それくらい絵の優先度が自分の中で高いですね。

もう一つは、お仕事で公開されたイラストを多くの方が見てくださっているということです。クライアントさんや企業の方々が自分のイラストに注目してくださるおかげで、次のお仕事にもつながっています。お仕事ひとつひとつが、次につながる大切な機会だと思っています。

____ファンやクライアント、他のイラストレーターとのつながりはありますか?

他のイラストレーターさんとは、相互フォローしている方々とコミケなどのイベントなどでお話することもあります。その後、ネット上で通話しながら作業をすることもありますね。ただ、自分はあまりコミュニティ作りが得意ではないので、少しずつ仲良くなれる方を増やしている段階です。

お互いに良い影響を与えられる環境を作れたらいいなと思っています。同業者との仲間関係が広がると、刺激を与えあうことで自身のイラストのクオリティアップに繋がると思っているので、できる範囲で仲間を増やす努力をしています。

基本的には個々に繋がりを作っているだけなので、自分で複数人のグループを形成していたり一緒に何かをするというわけではないですが、そうした繋がりを持った方から誘っていただければ一緒に行う活動にも参加させていただいています。

____普段はどのようにしてお仕事を獲得されていますか?

基本的にネットで公開されているお仕事のイラストと趣味のイラストをどこかで見かけてくれて、クライアントさんから依頼をいただくという流れが多いかなと思います。

お仕事のイラストなどは、公開されると同じジャンルの新規のお仕事へ繋がることが多いです。

____フリーランスになった当初はどのようにしてお仕事を獲得されていましたか?

私は少し特殊な経緯でフリーランスになりました。普通なら、会社員として働きながら副業でイラストの仕事を受け、徐々に独立する方が多いと思います。でも、私は病気で会社を辞めざるを得なかったため、準備期間がないままフリーランスになりました。

会社員時代から趣味で描いていたイラストをSNSで発信していたのですが、ありがたいことに、それを見ていた企業さんから「フリーランスになったのでお仕事を募集しています」という告知をきっかけにお声がけをいただけました。お仕事が来ない時期が続くことなく、次々と依頼をいただけたのは本当に恵まれていたと思います。

趣味で描いていたイラストをネット上で公開していたことが、結果としてフリーランスとしての活動を支える土台になりました。それがなかったら、今のように安定してお仕事をいただける状態にはならなかったと思います。

____趣味のイラストが自然とポートフォリオになったのですか?

そうですね。ネット上に公開していたイラストを、元々「この人にお願いしたい」と企業の方々に思ってもらえていたのだと思います。その発信が、自然とポートフォリオのような役割を果たしてくれたのだと感じています。

#仕事絵 数打あたる生誕祭2024 – 古弥月のイラスト – pixiv

イラストのお仕事を獲得するための仲介サービスやプラットフォームもありますが、私はそれを使わずに進めることができました。

もちろん、仲介サービスを利用してたくさんの仕事を獲得し、ニーズに応えている方もいらっしゃいます。どちらが優れているという話ではなく、インターネット上で発信したイラストが評価されて仕事の打診へ繋がるというパターンが私に合っていたのだと思います。私の周りでも、そういった形で活動を継続している方は多いです。

ネット上でイラストを公開し続けることは、確実に積み重ねになります。コツコツと続けていくことが大切だと感じています。

____売れ行きの変遷を教えてください

売れ行きは、基本的に右肩上がりですね。最初は実績も少なく、いきなりたくさんの依頼をいただけるほどの実力があったわけではありません。ですが、少しずつお仕事をいただき、それが広まっていくにつれて、安定して依頼が来るようになりました。地道に続けてきたことが、今の結果につながっていると思います。

____今後の展望を教えてください

現状、フリーランスのイラストレーターとして活動を続けられていますが、将来的にはさらに多くの企業さんや大きな企画に、自分のイラストを「使いたい」と思ってもらえるような存在になりたいと思っています。より魅力的なイラストを描けるようになりたいですし、イラストレーター界隈でも自分の名前が認知されるようなクリエイターを目指しています。

同時に、商業イラストだけでなく、自分のオリジナルのイラストも、もっと多くの方に楽しんでいただけるようにしたいですね。商業イラストでも個人のイラストでも、「この人の絵が見たい」と思ってもらえるような存在に成長していきたいです。絵を描くことが好きで、向上心を持つことが自分の性格の一部でもあるので、その気持ちを大切にしながらこれからも活動を続けていきたいと思っています。

これからのイラストレーターへ贈るエール

____これからイラストレーターを目指す方へのメッセージをお願いします

とにかく絵を描くことに真剣に向き合っていれば、必ず積み重なるものがあります。私自身、イラストを描くことを最優先にしてきた結果、それがプロとしての活動に繋がっていると感じています。これからイラストレーターを目指す方も、「なりたい」という熱意を持って、一つ一つの絵に真剣に取り組むことで、確実に経験が積み重なります。

技術が未熟だと感じることがあっても、自分が描きたいものを描き、それを大切にすることが重要です。その絵を描いた経験や向き合った時間は、必ずあなたの中に残ります。それを信じて、一枚一枚をしっかり描いていってください。その結果、自信を持てるものが積み上がると思います。

____告知したいことがありますか

自己紹介を兼ねた告知ですが、これからは「おしゃれな服を着た女の子」や「ちょっとカッコいい雰囲気のキャラクター」をもっと表現できるイラストを描いていきたいと思っています。これから公開する新しいイラストも、ぜひチェックしていただけたら嬉しいです!

古弥月さんのXより

 

イラストレーター 古弥月

X:https://x.com/koh_rd

pixiv:http://pixiv.me/koh_rd

Xfoio:https://xfolio.jp/portfolio/komizuki